これは、ある高校野球の監督からお聞きした話です。
そのチームには、一生懸命努力はしているのだけれど、なかなかレギュラーになれないA君と言う選手がおりました。
ある日、校長から監督が呼ばれました。
「実は先程A君のお父さんが事故で亡くなったと連絡が入った。彼にその事を伝えてもらえないか」と言う話でした。
監督は慌ててA君のところに行き、お父さんが亡くなった事実を伝えました。
「残念だった。しばらくは練習を休んでも良いから・・・」
次の日、監督が練習場に行くとA君がいつもの様に練習していました。
「おいおい、休んで良いと言ったじゃないか。なんで練習なんかしているんだ」
するとA君は
「今日の試合に出させて貰いたいから練習してます。」と答えました。
あまりにも思い詰めた表情で訴えかける様に言ってきたので、監督は「お父さんの事もあったから出してあげるか」と言う温情的な気持ちで、A君をその日の試合にレギュラーとして出場させました。
その日の試合に出たA君は、打つは守るはの大活躍で、チームも大勝利となりました。
監督はA君に「今日はどうしちゃたんだい。凄いじゃないか。」と声をかけると、彼は嬉しそうに「僕のお父さんは目が見えなかったんだけれど、きっと今は天国で僕の活躍を観てくれていると思うんです。だから頑張れたんです。」と目を涙一杯にして話してくれました。